研究代表者

横山 智 (Satoshi YOKOYAMA)/名古屋大学大学院環境学研究科・教授

専門分野:文化生態学、農山村地理学

プロフィール:1992〜94年まで青年海外協力隊員としてラオスで活動をしていました。それ以降、ラオスを中心に東南アジア地域で農山村地域の生業変化や自然と人間活動の相互作用の解明などの調査研究を行っています。熊本大学文学部講師、助教授(准教授)を経て、現在は、名古屋大学大学院環境学研究科教授として地理学の研究教育に携わっています。最近は、大豆発酵食品(ナットウ)にも興味を持っており、南アジアと東南アジア各地を調査しています。

主要業績:横山 智 2014.『納豆の起源(NHKブックス 1223)』 NHK出版.
S. Yokoyama, K. Okamoto, C. Takenaka and I. Hirota (eds.) 2014. "Integrated Studies of Social and Natural Environmental Transition in Laos (Advances in Asian Human-Environmental Research)" Tokyo: Springer.
横山 智(編) 2013.『資源と生業の地理学(ネイチャー・アンド・ソサエティ研究 第4巻)』 海青社.
横山 智・荒木一視・松本 淳(共編) 2012.『モンスーンアジアのフードと風土』  明石書店.
横山 智・落合雪野(共編) 2008.『ラオス農山村地域研究』 めこん.

個人ホームページ:LEARNING FROM THE FIELDS

研究分担者

佐藤廉也 (Ren'ya SATO)/大阪大学大学院文学研究科・教授

専門分野:地理学、文化生態学

プロフィール:1992〜94年にエチオピア低地の森で焼畑や狩猟・採集を行うマジャンギルの人びとと暮らし、以来彼らの暮らしと森との関係を中心に調査を続けています。20年経過して、当時の幼い子供たちも立派な大人になる一方、親しくつきあってくれた人びとが何人もこの世を去りました。時の経つ早さに驚くとともに、生まれ、成長し、結婚して子供を産み、歳をとっていく「ヒトの生涯」に関心を持つようになりました。ラオスでは、アフリカの焼畑との比較とともに、出生・死亡をヒトの生活史との関連で考えてみたいと思っています。

主要業績:佐藤廉也 2009.「ヒトの生業は生と死にどう関わってきたか─森林焼畑民のライフコースと人口史」池谷和信(編)『地球環境史からの問い─ヒトと自然の共生とは何か』60-78. 岩波書店.
池谷和信・佐藤廉也・武内進一(編) 2007/2008.『朝倉世界地理講座─大地と人間─ 12巻 アフリカI・II』朝倉書店.

白川千尋 (Chihiro SHIRAKAWA)/大阪大学大学院人間科学研究科・教授

専門分野:文化人類学

プロフィール:1991年から93年まで青年海外協力隊員としてヴァヌアツでマラリア対策に関わりました。その縁で、しばらくヴァヌアツの人々の伝統医療のことなどを文化人類学的に調査・研究してきましたが、2008年からはラオス北部で蚊帳の調査をしました。今回は、マラリア対策をはじめとする保健医療政策の進展、マスメディアの普及、出稼ぎの活発化といった現象が、ラオスの人々のミクロな人口動態とどのように関係しているのか、文化人類学的視点から考えてみたいと思っています。

主要業績:白川千尋 2001.『カストム・メレシン-オセアニア民間医療の人類学的研究』風響社.
白川千尋 2005.『南太平洋の土地・観光・文化-伝統文化は誰のものか』明石書店.

個人ホームページ:http://anthropology.hus.osaka-u.ac.jp/staff/shirakawa.html

中澤 港 (Minato NAKAZAWA)/神戸大学大学院保健学研究科(国際協力研究科兼任)・教授

専門分野:人類生態学,人口学,公衆衛生学(国際保健学,環境保健学,疫学)

プロフィール:修士課程の途中までは食物中と唾液中の元素濃度の関連を明らかにするために実験をして生体試料を分析したり,安定人口モデルに世帯構造を組み込んでコンピュータシミュレーションしてみたりと,フィールドワーカーではなかったのですが,1989年にパプアニューギニア低地に住むギデラと呼ばれる人々の村でのフィールドワークに参加する機会を得て以来,パプアニューギニアとソロモン諸島を中心に,食物摂取,エネルギー消費,疾病罹患関連行動,人口変動など地域生態系における人々の生存と適応の全体像を捉えるという視点での人類生態学的な調査を続けてきました。最近はカンボジアやタイなど東南アジアとのつながりが増えてきて,今回ラオスでも調査ができるということでワクワクしています。

主要業績:渡辺知保・梅崎昌裕・中澤 港・大塚柳太郎・関山牧子・吉永 淳・門司和彦(編)2011.『人間の生態学』朝倉書店.
吉岡 政德[監修],遠藤央,印東道子,梅﨑昌裕,中澤 港,窪田幸子,風間計博(編)2009.『オセアニア学』京都大学学術出版会.
中澤 港 2007.「小集団人口学」稲葉 寿編『現代人口学の射程』ミネルヴァ書房.

個人ホームページ:中澤 港の個人サイト

森木美恵 (Yoshie MORIKI)/国際基督教大学教養学部・上級准教授

専門分野:人口人類学

プロフィール:ペンシルバニア州立大学大学院に在籍中の2001〜2004年にタイのバンコクに在住していました。その間にはESCAPの人口と開発部門でコンサルタントとして勤務した経験もあります。また、2003年にはアメリカのNational Science Foundation (NSF)の資金を得てバンコクにて博士論文のフィールドワークを実施しました。2007年に同大学院より博士号(人類学、人口学)を取得後は、日本大学人口研究所の研究員として人口動態と文化的価値観の関係性について日本の低出生の観点から調査してきました。2009年より現職の国際基督教大学にて准教授、2016年より上級准教授として文化人類学の教育に携わっています。日本を含むアジア地域におけるマクロの人口動態とエスノグラフィックな意味体系の相互作用に焦点を当てた調査研究に興味を持っています。ラオスでは出生率と生殖行動規範の関係について解明したいと考えています。

主要業績:Moriki, Y. 2017. Intimacy and physical happiness in Japan, In W. Manzenreiter and B. Holthus (eds.), "Happiness and the Good Life in Japan." London: Routledge, pp.41-52.
Moriki, Y., Hayashi, K., Matsukura, R. 2014. Sexless marriages in Japan: Prevalence and reasons. In N. Ogawa and I. H. Shah (eds.), "Low Fertility and Reproductive Health in East Asia." (International Studies in Population, Vol. 11). Dordrecht: Springer, pp.161-185.
Moriki, Y. 2011. Co-Residence among Bangkok elderly: Implications of children’s marital status. "Marriage and Family Review" 47: 529-547.

連携研究者

蒋  宏偉 (Hongwei JIANG)/人間文化研究機構・総合人間文化研究推進センター・特任助教

専門分野:人類生態学

プロフィール:大学院生時代は、中国の海南島内陸のリー族村落で生態人類学的調査を行ってきました。特に注目したのは、1979年以降の30年間村落各世帯の人口変動と人々土地利用の変動の関係でした。その後、小型GPSおよび加速度計を用いた人間行動調査の方法開発にも取り組むようになり、現在この方法を用いて、ラオスでタイ肝吸虫流行地域の排便行研究を行っています。Prelicのプロジェクトでは、急速に近代化している中でラオス農村住民たち生業戦略選択のメカニズムを明らかにしたいと思っています。

最近の業績:蒋 宏偉 2016.「ラオス水田稲作民の「のぐそ」を追う」, 秋道智彌・赤坂憲雄編『人間の営みを探る』玉川大学出版, 202-216.
Sekiyama, M., Jiang H., et al. 2015. Double burden of malnutrition in rural West Java: Household-level analysis for father-child and mother-child pairs and the association with dietary intake. Nutrients, 7(10): p. 8376-8391.
Lin, L. and Jiang H. 2016. Healthy environment and healthy living in urban China: An emerging field in eco-health research. The Journal of Contemporary China Studies, 69-78.

高橋眞一 (Shinichi TAKAHASHI)/新潟産業大学経済学部・客員教授[神戸大学・名誉教授]

専門分野:人口地理学、人口・エネルギー論

プロフィール:世界の人口転換を比較しその地域による違いを明らかにしていく研究を行っています。この研究は今後の世界高齢化との関連でも重要だと考えます。今回はその一環としてラオスの人口転換、特に死亡率低下・出生力低下と生業、医療、人口移動等の各変化との関連を実態調査から明らかにするつもりです。ラオスの人たちにはずいぶんご迷惑をおかけしますが、この結果が何等か還元できればと思っています。

富田晋介 (Shinsuke TOMITA)/名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院(環境学研究科)・特任准教授

専門分野:農業生態学・東南アジア地域研究

プロフィール:出生、死亡、移動といった人口学的な現象が、どの程度、世帯や地域の形成史や生業史に影響してきたのかについて興味を持っています。とくに、人口に関連したデータの蓄積がないために、これまで人口と歴史の関係について語られることが少なかった地域のひとつである、東南アジア大陸山地部を対象に、調査をすすめています。

最近の業績:Tomita S, Parker DM, Jennings JA, Wood J, 2015. Household Demography and Early Childhood Mortality in a Rice-Farming Village in Northern Laos. PLoS ONE 10(3): e0119191. doi:10.1371/journal. pone.0119191
Parker, D.M., Wood, J.W., Tomita, S. DeWitte, S. Jennings, J. and Cui, L. 2014. Household ecology and out-migration among ethnic Karen along the Thai-Myanmar border. Demographic Research 30: 1129-1156.
Badenoch, N. and Tomita, S. 2013.Mountain People in the Muang: Creation and Governance of a Tai Polity in Northern Laos, Southeast Asian Studies 2(1): pp.29-67.

西本  太 (Futoshi NISHIMOTO)/長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科・特任助教

専門分野:社会人類学、人口人類学

プロフィール:もともとラオス農村社会の変化や宗教を研究していましたが、数年前から、インタビューを通して過去の人口や出生力の変化を調査するようになりました。口頭で語られる社会の質的な変化が、同じく口頭で語られるけれども量的な人口変化とどう対応するのかを調べたいと思ったからです。PRELIC実施期間中に3つの課題を達成したいです。一つはラオス農村社会における性の文化とその変化を深く掘り下げて調べること。二つめは住民数万人単位の人口動態観測システムを構築すること。三つめはその観測システムを維持し、自分たちの研究や保健政策に活用できるラオス人研究者・調査者を育成することです。

最近の業績:西本 太 2014.「人口規模、人口再生産・移動」総合地球環境学研究所編『地球環境学マニュアル2』朝倉書店.
西本 太 (金子 聰ほかと共著) 2014.「ラオスの保健人口サーベイランスシステムからみたラオスの人口転換」『民族衛生』80(1).

丹羽孝仁 (Takahiro NIWA)/帝京大学経済学部・講師

専門分野:経済地理学、労働地理学

プロフィール:私はこれまでタイ国内の経済について研究してきました。特に、人の移動や働き方に焦点を置くことで、産業構造など地域間の差異が個人個人のキャリアコースへ与える影響を調査しています。この研究では、初めて国際間の人に移動に着目します。タイとラオスという隣り合い同じような文化を持つ2国ですが、経済には大きな差があります。ラオスの農村の人びとがタイへの出稼ぎをすることが彼ら自身や彼らの村にどのような変化をもたらすのか、実直に調べたいと考えています。

主要業績:丹羽孝仁 2010.「タイにおける国内人口移動の空間的パターンとその変化―NESDBのデータを用いて―」『季刊地理学』62(2), pp83-92.

研究協力者

堀口範奈 (Hanna HORIGUCHI)/神戸大学大学院保健学研究科・博士課程後期課程

専門分野:母子保健、国際保健

プロフィール:母子を取り巻く環境やその変化がいかに彼らの健康へ影響を与えるのか、子どもを産み育てやすい環境とはどのようなものかということに関心があります。ラオスでのフィールドワークを通じて、アジアや世界における母子保健にまで目を向けていきたいと思います。

前田悠佑 (Yusuke MAEDA)/名古屋大学大学院環境学研究科・博士前期課程

専門分野:社会地理学、人口地理学、移動

プロフィール:グローバリゼーションの進展など地域を取り巻く環境の変化がヒトやモノの移動にどのような影響を与え、それらがローカルな社会をいかに変容させるかに関心があります。ラオス北部農山村における移動の役割を学問横断的に明らかにできるよう、様々な分野での先行研究はもちろんのこと、フィールドからも真摯に学びとっていきたいと思います。